2006-06-14から1日間の記事一覧

箱舟が出る港 第一劇  一章 渚 一

岩礁に 浪が突き刺さる。 岩の割れ目のように、 磯前五平の顔には、 深い皺が刻まれていた。 もっとも皺だらけの顔には、 左のコメカミから、唇にかけて、 哀愁の傷もあった。 五平は旧制中学を出ると、家業である網元として漁業に従事していたが、 帝国海軍…