2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

箱舟が出る港 第二劇 一章  エピソード

瞼の上に強いオレンジ色が重なった。 細く吊り上った眼が、パチリと、開いた。 寝起き特有のけだるい眼差しは見られない。 熟睡出来たのか、何かを直ぐに始めたかったのかは分からない。 空にしたウィスキーの瓶が、何本も転がっている。 ブラインドを閉めず…

箱舟が出る港 第二劇 一章  エピソード

日差しが強い。 12月に入ってすでに三日が経過したが、太陽だけが強烈な存在感を、 幽玄に示している。 茨城県大洗サンビーチ。 2006年10月に、多数の溺死者を出したにも関わらず、砂浜は色とりどりの パラソルや水着で埋め尽くされていた。 焦点が定まらな…

箱舟が出る港 第七章 二節 激動の波頭 八

冬の海の横たわった岩に、幾千幾万とも知れない蝶が止まっていた。 蝉は舞う雪に祈りを込め、幾千幾万とも知れぬ咆哮を放っていた。 その体を揺り起こそうとしてる。こじ開けようとしているのだ。 ―――無点にて審判を待て! この宇宙に来たからには、己が罪を…

箱舟が出る港 第七章 二節 激動の波頭 七

カンテラの頼りない灯りに混じり、穴底の周囲の壁を攪拌する光が忽然と 加わった。 とろけるような青い色合いで、土を石を岩を段々と駆逐し、三人を円形の 舞台に引き上げるように曳航している。 生き物のような光は縦や横そして斜めからの法則性のない交差…

箱舟が出る港 第七章 二節 激動の波頭 六

どこからともなく流れる、ユーミンの歌が耳にはいると、繋いだ手がいっそう 強められた。 少年も少女も、新宿の雑踏の中にいる事を忘れ、草原の中で青い香りに包まれ たように、清楚な酔いが周っている。 かい人二十面相事件、豊田商事事件、日航ジャンボ機…

箱舟が出る港 第七章 二節 激動の波頭 五

幾つもの発見があった。 世の中の常識を逸脱した 天変地異の現象であったが、 地球レベルの考え方を 180度改めて見れば、至って 自然の法則がなせる技なの かも知れないと、三人は無理に納得しようと、 極力努めるようにした。 時間が経過するにつれ、争いご…