2006-11-01から1ヶ月間の記事一覧
男は間を置かず 返す刃で上段から、 斜め四十度程の角度で、 化け物の右手を 切りつけた。 赤い火花が散り、 金属の鈍い音がして、 纏った手の凶器が切断され 吹っ飛び、枝を切り裂き、 さほど大きくない木に突き刺さった。 切り落とせたはずだ。 計ったよう…
切断された左手の中指、薬指から大量の血が 流れていた。 そんな事にはかまってられない。 中腰の不利な体勢から、辛うじて大木を盾にして、 次の攻撃を避けた。 恐ろしい化け物の手である。 力こそ感じられないが、膂力がある、早い。 強靭なカミソリそのま…
唯根鉄男やまぐも艦長は、メインディスプレイを見ていた。 艦体下弦の格納庫である。 銀色のカタパルトが漆黒の闇のなかに、かすかな唸りを上げて広がっていた。 青い地球が多少の揺れに比例して、震えている。 ツン.... 着陸小型宇宙船艦「ときわ」は今カタ…
指輪の色が鈍く光っている。 大林学長秘書が、指をキーボードに置いた。 「そこだ! そこで一度止めておいてくれていたまえ!!」 プロジェクターから大画面に投射されたその瞬間を確認すると 市島は秘書を制した。 「宜しいか?ここにひとつの鍵がある、検証は…
常央大学 本部棟八階大会議室。 楕円型のテーブルの 一番奥に背を向けた 市島典孝が居た。 窓の外は水戸市内が 一望できる。 高層建築の県庁舎が ゆっくりと形を整えつつあった。 強い揺れが収まり、ようやく正常が戻ったばかりである。 遠い筑波山が赤々と…
この夜 筑波山を襲った マグニチュード8の 巨大地震は、 男体峰を無作為に 鋭利な刃物で切断し、 いたるところに炎々と赤い赤い血管を 浮かび上げらせた。 血管は破裂し血液のような真紅の火柱を上げ、 まるで蛇に乗ったかの如く 悪魔の集団となり、くねく…