2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

箱舟が出る港 一章 渚 四

空調が程よく効いていが、 粘っこい体感。 外はおそらく30度を越す はずだ。 ツクツクボウシの 別離のハーモニーは、 吸盤のように 未だに消える気配がない。 底知れぬ不気味な集団となり、季節を止めていた。 夏に現れる生物は、未だ消える気配がないのだ‥…

箱舟が出る港 一章 渚 三

常央大学 付属病院。 ・・・痛いんだろうなぁ ・・・男には分からねえ 痛みなんだろうなぁ さしずめキンタマを 蹴られた痛みと 言う事かなぁ・・・おっと、 すいません。 看護士とぶつかりそうになった。 剣持正和は一箇所しかない、喫煙所で煙草を吸う。 分…

箱舟が出る港 一章 渚 二

「よしっ、素晴らしい球だっ!!」 見守る野球部員達は一同に嬌声を上げた。 「おいっ!、何キロ出ている、飛田?!!」 監督である、太田垣英彦が聞いた。 聞かれた少年は、信じられないという顔をし、スピードガンにもう一度目をやった。 「こんな馬鹿な‥ひゃく、…

箱舟が出る港 第一劇  一章 渚 一

岩礁に 浪が突き刺さる。 岩の割れ目のように、 磯前五平の顔には、 深い皺が刻まれていた。 もっとも皺だらけの顔には、 左のコメカミから、唇にかけて、 哀愁の傷もあった。 五平は旧制中学を出ると、家業である網元として漁業に従事していたが、 帝国海軍…