祭り(少年の日) 三

murasameqtaro2010-10-03

蒼い夏空が逝く・・・・
ひこうき雲を曳航しながら逝く







向日葵が何かいいたげに頭を垂れた
地面にしゃがみこんで盆踊りを見つめる少年三人
マッチ、懐中電灯、鉄人のお面、銀球ピストル、水鉄砲・・・・
ポケット一杯に詰め込んだオモチャに 
より頭を垂れた夜の向日葵が饒舌にも何かを問い掛けていた。
やぐらを中心に幾重にも踊る人々。
大人の祭りだ。
それがどう言うものか俺たちはやぐらの下に潜る。
木の階段を上るこれを作ったその男たち。
裸電球がまぶしくて、太鼓の音に、かつて母の胎内に居たかのような眠さを覚えた。
『もう九時近くだから帰ったほうがいいよ』
亡き祖母が近くに来て言う。
しかし少年達はメリーゴーランドに上り、祭りを見ている。
『こんな面白いもの何故毎日やらないんだろうな』
誰かが言った言葉を、今、思い出す。
思い出作りのためにやるんだよと。
大人になった俺は過去のそいつに教えてあげている。
赤銅色した上半身裸の乱暴に見えた男たちは確かに素晴らしき演出家であったのだ。
少年に日付が変わる瞬間を初めて見せてくれた教育者。
その日俺は初めて時間を跨いだ。

〜続く〜