関東では風の強い日が多い今年の冬。
より風のつよい一月終わり中で、旧友のH君に偶然会った。
某スーパーの駐車場。



「あらHじゃねえか、しばらくだな、二年半ぶりくらいか?
何やってんだよ?」
「買い物だよI(私のこと)は?」
「同じだ。母ちゃんに頼まれものしてな」
「まだあそこで仕事やってんの?」
「うん。給料は安いが仕方あるめえな。
・・・転職もなあ、ところでJAにいるんだろ?」
ちょっと下を向いた彼は恥ずかしそうに
「いや辞めちまったよ・・・」
「いつ?なんでまた?まもなく課長だとか言ってなかった?」
「まあな、いろいろあらあ、ちょい疲れたわ・・・」
「で、今は?」
「腰掛でJA下請けんとこで葬儀関係やってる。
段取りとか霊柩車の運転とかいろいろだよ」
「何?葬儀屋だと?あれは大変だろ。あまり人がやりたがらないだろうし。
死体を搬送して焼却室へ入れたり骨を整理したり
・・・俺にはできんね、あんなのやるくらいなら土方だ。
・・・母ちゃん心配してんべ?」
「いや、内緒にしている。まだJAに居ることにしてるよ、
言うなよ?・・・俺は葬儀の段取りと運転だけだ」
「おれんちの近くで葬式が出来、
事が終わったら霊柩車運転して遊びに来いや(笑)
その車で酒飲み行こうぜ。おまわりも止めんねえだろ」
「馬鹿言ってんじゃねえ(笑)・・・腰掛けだよ、
いずれやめたら、静かに八百屋でもやろうかと計画しててな」
「八百屋?驚いたね。・・・ま、JAにいたから解るが、
見込みあんのかイ?」
「内部の足の引っ張り合いの酷さに比べたらなんでもない、
気楽でいいがな」
なるほどどこでもありがちな政治的なもの
出世競争に疲れたんだなと察した。
少し痩せたなと思った。



三人目。
私が知っているJA職員で学卒で入り相当な年月を勤務し、
退職したのはこれで三人目だ。
内ふたりの理由は勤務時間が終わったあと保険の勧誘がきつく
・・・退職した。
金融業務をやり終わったら二人一組で訪問して保険の勧誘とやら。
これはより昔のことだけれど、多くの希望退職者を出したらしい。
私の父親世代の頃だが
地方では市役所とJAは親が奨める花形コースだったとか。
このJAが大きな過渡期を迎えようとしている。



農林水産大臣ポストはなかなか安定しない。
残念ながら、先日また辞任いたしました。
企業が農業法人に出資し自由競争させるといったJA改革か。
自由競争なき閉鎖された牙城は崩して当然である。
何よりも価格が安くなる期待があるっしょ。



以前も記したけれど、私の家では農協を通しての米は買っていない。
生産農家から購入しているのは混合米の懸念がないからです。
その農家さんは近所付き合いもありますが、
丹念に丁寧に魂を込めて作っていると解っているので、
他の人が作ったものを混ぜるライスセンター、
すなわち農協経由のものを買いたくないからです。
農協の事情はよく知らないけれど、改革され米価が安くなったとしても、
スーパーなどでは買うことはないでしょう。
付き合いのある農家さんが農家を辞めない限り
購入しようと思ってます。



「どうだ、JAに未練はないかね?」
「ないね、JAどころかサラリーマンはもう辞めたよ、
転職先があってもやらねえな」
「そういや、結構な土地があったっけかな?」
「荒地だがな、
先祖が残してくれたものを蘇えらせたい、とな、勿体ないし」
「生産が始まったら購入させてもらうよ、
親父がやってる家庭菜園あるけどな」
「ああ、買ってもらえたらありがたいね、最初は保障せんけど」
「君が作る野菜なら間違いはないだろうよ、
儲かるかどうかは知らんがな」
「よけいなしがらみが無いと思いない。組織じゃなく俺個人だ。
つまらん争いをやっているとおかしなものが出来ると思うよ」
「そりゃ、まあ、そうだ。月光でも聞くか、ええ・・・?」