星空のグローブ 2 亡き父に贈る

礼儀ただしくさようならを言っている。
しかし仏壇の写真は心の中を見すいている。
思えばいい加減な子供だったな。



小学五年生の時、初めてグローブを買ってもらった。
頼んで、夢みて、泣いて、祈って・・・
それを手にしたときの天にも昇る喜びをも、
・・・私は、私は、もはや忘れようとしている。


自分が高卒なのをはじいて、男三人兄弟を育て、
大学までいかせようと、
自らは食べたいものも食べなかった。
それを知りながらも少年は高いグローブを懇願し、
「賞与が出たから・・・」
とだけ言い残し、渡してくれた。



「馬鹿な息子だったよな・・・本当にクズだよ俺は・・・」
手を合わせる。



風もないのに線香の煙は揺れることを知った。