箱舟が出る港 第三章 二節 箱舟が出る港 一

murasameqtaro2007-01-02

常陸那珂川
太平洋に流れ込む
那珂川水系の本流で一級河川である。
流路延長150km、流域面積3,270km2。
昭和十七年三月、那珂川に一隻の大型漁船が運び込まれた。
第一磯前丸。
排水量 135トン、全長 110メートル、
幅 8.5メートル、吃水 2.1メートル、速力 18ノット乗員28人。
流石は祖が徳川水軍であり、堂々とした漁船であった。


常陸那珂川には葦他の雑草や水際に垂れる大木に覆われた、
殆ど人が踏み入れない場所があった。
ここは地元民には磯前工廠と呼ばれていた。
工廠、即ち船の建造所である。
磯前家は十九の魚船を擁し、その全部がここで建造され、
または修理されていた。


船大工と言うものは器用なものだ、中山重道は
磯前一族に使える人々に敬意を送っていた。
大工の技術だけでは、ない。
航海技術、無線技術、そしてかつて水軍であった為、
艦砲技術をも身に付けている人物も存在した。
市島、中山よりも驚愕の視線を送ったのは、
大風工業所の面々であった。
軍艦を建造する技術は充分にある。
また、戦いも知っている。

箱舟であった、しかし逃げる箱舟ではない。
箱舟が建造出来る体制が整ったのである。


箱舟が出る港、それは常陸那珂川に置かれた。



※謹賀新年

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