箱舟が出る港  第三劇 二章 月世界の戦慄

ピキーーーーーーッ・・・


青々とその瞳に光が入る。

そして・・・細い。
ピアノ線を思わせる眼と同じ色のビームが、首を下げ
立てた双方の耳の中から、足元の地下をめがけて放射された。



小型艇ロナルド・レーガンから降りた戦闘ロボット、ウルフ16000は月面に
立っていた。
光を放射したのは正確な、地点、を計測しているからだ。
足元を掘り進めば、これより地下30000メートルの距離に、その世界がある
はずだ。


・・・誤差0.02フィート、計測完了 但し以後の活動は予定通りX1に
追行・・・
ピアノ線が耳に戻る。
・・・了解X1を分離する 次の指示まで待機せよ・・・

X1とは戦闘グリズリーである。


位置情報をウルフからを受け取った司令船。
上空に静止する宇宙船やまぐもは【スペースバンカーバスター】の準備にか
かった。
「60年前の科学力は凄かった・・・。改めてそう思う。見ろあそに立っている
クリスタルタワーを・・・あれが・・・遠い昔は駆逐艦だったとはとても思え
ない。この地に来たのは、避難か?箱舟だったのか?いや違う・・・魔除けだ。
奴らを封印しているのだ。ここまで追って来て、地下に閉じ込めたのだ・・・
タワーは仏像といっていい。そうだな心【ハート1号】よ?」
唯根鉄雄船長は考え事をする時の癖である鼻毛を抜いた。


ウルフより北北西に220キロ。
アルフォンサス・クレーター上空4000メートルに居るやまぐもの位置と、
タワーの顔の部分が同位置にある。


「神聖なものです、キャプテン。人を作ったのは神などではなかった。私たちの
居る階層ははたしてどのあたりなのでしょう?」
「まあ、最低さ・・・人体を宇宙に例えればピロリ菌みたいなものが住んでいる
場所だろうよ・・・だから創造主に叩き出されるはめになる。人類はガン細胞さ
・・・この宇宙は我々を駆逐しない限り、死に行くのだろう」
もう一本鼻毛を抜いた、痛い。


「曲でも流しましょうか、キャプテン?」
「おう、いいね」
イチロー・トバはやめてくれ、男ばかりでうんざりだ」
親指を立てたマークが振り向いた。