箱舟が出る港  第三劇 二章 月世界の戦慄

移動した手段は何か?
クロロフォルムを嗅がされ、キャンプデービットから拉致された
指導者ふたり。
ここがアマゾンの奥地なら、ヘリコプターは着陸出来ない。
例えキャンプデーピットを賊が離陸したとしても、アメリカの
ヘリコか戦闘機が、追跡に乗り出すのは当たり前である。
船や潜水艦も同じだ。捕捉など米軍にとって簡単なはずだ。
ならば容易に追跡出来ない手段によって、ここまで運ばれたのだ。


それは何か?



拉致されて7日がたった。
救助の気配さえない米軍・・・




女王、東洋人、それも日本人が半裸のままで玉座に座る。
豊かな乳房の影、顔を見ることは出来ない。
前の晩に見事な満月を見た。
頬なでる月光は冷たくもあり純真で、常世に居る事が恥ずかしくなった
ケントではあった。
似たような者が前にいる。直視出来ないがなんとも神聖な女だと解る。


女の手下どもは見たことのない奇妙な祈りを女王に捧げた。
感じた事のない眩暈の中に切れた糸が繋がる。
一瞬だがふわりと緊張が溶けた。


そう言えば・・・ケント・アンダーソンは糸先に疑念をもった。
・・・歪みの空間がたまに現れるのです・・・
執務官の言葉。
あれは大統領に就任して初めての日だった。
・・・一笑にした私だったが



・・・オレゴン・ボルテックスをご存知ですか、
ミスタープレジデント?・・・
・・・いや、知らんよ?・・・なんだねそれは?
・・・そうですか。・・・稀に現れるのです歪んだ空間が地下室に。
私も大統領府に使えて40年になりますが、たった一度だけ、キャンプ
デービットとの地下室に現れました。・・・コインが落ちた。しかし
その後の軌道が見事にも奇妙でした。まるでそこに傾斜があるように
急速に転がり壁に当たったのです。今度は床にコインを置いてみました。
するとどうでしょう・・・またもや転がりました。なんの力も与え
ていないというのに・・・ペットボトル、スプーン、そして・・