哀しきノスタルジア

murasameqtaro2010-11-13

若葉の静脈
手のひらを朱に染めてゆく
ABCと書いたペンマンシップ
好きだと言えずに
英語で書いた手紙を送りたくて
なんども頭を抱えた夜毎
宵も知らずに抱きしめた玉手箱
思い立ってもとても飛びたてない




愛しい思いを伝えられないから
ロックのナイフでハートをこじ開け
ペンを片手に言葉を捜す
五番目の季節は手のひらに
とても小さな玉手箱



銀杏に落ちる雨
目を閉じれば明日になる寂しさ
記憶の彩りの今日と
違う日がきっと来る
人は思い出をひとつ探すたびに
星をひとつまたひとつ見失う
静脈のない葉が風に流れる
             


煙のようなノスタルジア