今週のお題「2010年私の漢字一文字」



微光もつ珠が育ち時を経て集団となった星雲をこの国ではスバルと呼ぶ。
何光年、あるいは何億光年離れているのかは知らなかった。


12月の夜の街路灯に照らされた小路にある水溜りうつむいて歩く俺はぴょん飛ぶ。
山の稜線の上の光りと目があう。


「うつむいて歩くと路を踏み外すぞ?」


季節の変わり目を楽しむこともなく過ぎ去った幾数年の日々。
蛇行した俺の軌跡が星光に照らされて背後にうっすらと見えた。
年老いた天空の先達は何もかも知っていた、やはり。


知っているのは自分だけで良かったけれども
ポケットに詰め込んだものを夜の狭間に捨てていいかな?


「水平線の向うで手を振る者を探しに行けばいい。
短き黒い足跡は流れ星に捨てていいからな」


海への憧憬を探し続けていたころ確かに心は晴れていた。
夜は眠るものだといつも思っていたよ。
苦しい年月の中 路を失い気がつけば真夜中の蟻になっている。


「美しいのは空よりも下だよ、忘れたか」
遠く離れている星団が耳元に来ていた。


・・・もう迷うまい、そんなに近くにいたとはな。


遠く離れている星団が耳元に来ていた。
来年へと橋を掛ける希望の跫を高らかに鳴らしながら。