今週のお題「今年の抱負」

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二年半くらい前になるけど、前歯一本半を折った。
寸止めなのに相手の拳が間違ってまともに口に当たり欠けてしまったのである。
残り半分はぐらぐとゆれてもう直ぐ抜けてしまいそうだ。
空手の稽古上のことなので誰にも責任はない。
正直歯医者さんへ行くのが嫌でおっかないとくずぐす。
少々だが武道をかじっていてもこのザマだ・・・格好悪いがそのままにしておいた。苦手なものは苦手なのであると。


歯を隠すように喋るので生き生きとした表情などが影を潜めたことに気付く。
二本の歯でも荒廃は表情に出るものだ。
不自然さが瘴気のように醸し出た。


―――なんにしろ治療まで目立つことは出来ないな


大声で笑えないマイナスの遮断である。
ぐずぐずしていた。
あふふふ、ヒュゥw
酸素がまともに吸えず吐けずかの如く変な笑い方なのである。
ははは、あいつ前歯がないね。反対に誰かに嗤われていたかも知らん。
これではいくらなんでも気持ちが悪いし困ったものだと、とうとう歯医者へ行く決断をした。
重い腰を上げる。



―――何年ぶりだろうな



奥歯の痛みに耐え切れず虫歯の治療したのが六年近く前だったかな?
治療が実に実に痛かった。
重い腰を植え付けられた虎馬。
拳や蹴りで打たれる痛さと質の違う痛みは、耐えがたかった。


胃カメラ
先端の青い光りが不気味。喉に液体麻酔をして蛇のような管を入れる。
掻き回された感じがして余計悪くなった不快感があったが、まだそっちのほうがましだったなと。
ポリーフを取った時も同じ、まだこっちのほうがいいやと。
治療後口も腫れて暫くマスクをしていたっけな。
まぁ歯医者さんの腕云々はともかく・・・



―――もう歯医者は行くまい、二度とご免だよ



あのギーギー削る音がまだ耳に残っている。
大人のくせに大人のトラウマが勁くなんとも情ないことこの上ない。


口を自然に開けないと表情も変わる。曙光は届かない、射さないものだ。
笑う門には福来る。笑えないから不幸が来る。


―――なるほどな昔の人は良く言ったものだ
このままではたいした希望は抱けまい だから



模糊は去年の夜の帳の中に捨ててきたではないか。
治療日は明日10時の予約である。


早くも心象はうつろいを早めている。
いい事なのだろう。
元通りになり初めて抱負が実現するかも知れない。
そう・・・今は歯の治療に奔騰することが抱負です。

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【追記・ここまでは酷くないw】

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看守眼

看守眼

一気に読んだ。


人生の哀歌を鮮やかに描く短編集である。
多種多様な犯罪者と向き合うので【刑事目】が養われるといわれる留置管理係。
近藤は刑事になる日を夢見て留置管理係を志願し続け、看守人生を送ってきた。定年が間近に迫る彼が執拗に追うのは証拠不十分で釈放された容疑者だった。彼が見抜いた事件の意外な真相を描く表題の【看守目】。
個人的には【臨場】の倉石監察官より好きなタイプである。
また胸にほろりとくるのは、【秘書課の男】である。ひたすら仕えることで築いた知事の信頼を、ボストン大学卒の若い男に奪われた知事公室秘書課の小心な課長・倉内。自分が失墜したのはなぜか?思い悩み、吹っ切れるまでを、経営破綻した知人の逸話を絡めて描いて秀逸と思う。