黎明の街

復興祭

今週のお題「私のふるさと」




降ってもいないのに叩く雨。
しぶきが車を覆い包んで、白き小さな炎を纏う。
街に入ると思うこと、雨足と飛沫だけのような感じだ。
視界が狭くって、暗冥に溶け込む感じもしていた。
が・・・


自転車で二分。
ほんの近く、400メートルほどの短い距離を境に
地区は違うけれど、この一帯は旧筑波町、故郷です。



北条の竜巻から早や3ヶ月が過ぎた。
街はまだ復興に至らず、日中は工事車両ばかり。
子供たちが楽しみにしていた夏祭りは、
こっち側にはなかった。
門前町
古い街だからあと100年の時間が経過しようが、
近代的なインテリジェンスビルなどまず建たないだろう。



市内中心部は林を開いて計画的に作られた街だから、
便利といえば異論はないが、趣なき機械の街並みだ。
ラジオシティの調律は必要なし、
しゃれたアーケードもいらない、
市内北部の街は必然なものを尊いと思っている。



炎天下の西から。
竜巻被害に逢った中で、猛練習に耐え、
全国の大舞台に立ったピッチャーがいる。










自分が出た中学の大後輩でもあり、
甥とともに中学時全国で準vを果たした選手で
少年野球の頃からよく知っている。



天災にやられた街の住民は
それぞれ酒とか食べ物とか手に持ち寄り、
彼の実家近くに集まり声援を送ったという。
「これで光が灯った感じがするのぅ・・・」
イカを焼きながら、
潰された食堂の老人がポソとこぼした後に、
まだまだだ、これからだ、ガンパッべや
の大合唱が聞こえたという。



閉塞感のある街での復旧作業は暗い。
報道はされていないけれど、
新築、リフォーム、廃業・・・
大変な出費で生活を脅かされている。



「もう店なんかたたんでしまおうと思ったけどよ」




彼はその街へ風穴を開けてくれて、
いい空気を運んできてくれた。





「もう店なんかたたんでしまおうと思ったけどよ
甲子園の浜風が流れてきたのか・・・
神郡から飛んできた源氏蛍も今年は多かったの
宇宙の良心ここにあり、吉兆、よきなりだでのう・・・」

長老が吐く。




ベクトルが変わるだろう。



応援しているのは災害に逢わなかった街の人だけではない。
速球がテレビを通じて全国に流れた街の出身者に
「頑張ってるよと」メッセージを流したに違いない。




復旧作業も捗るだろう。





100年たっても何も変わらなくていい。
ただ災害前に明るい街に戻せるならと思う。




故郷の川、いい音を出して流れて、いる。
今日車で通った商店街に

心の雨の気配は、一切あらず。