懺悔す
買いようがない、けれど買わねばならぬもの。
売るほうは値を提示しないので、仕方がなく、
おおよその相場を周囲に聞く以外にない。
商品と言ってはバチが当たる?
失礼だが、面倒くさいそれ、・・・ズバリお布施です。
貧乏ながら人様並みの葬式を出してやりました。
その後の一般的な法要も世間様並にやりました。
父の一周忌が近づき墓誌を彫ろうと準備してます。
彫刻屋さんは当然値段は提示してくれて、
まあ世間一般の妥当な額でありました。
で、はっ、と改めて考えたのが父の戒名。
墓石の裏側にある先祖の戒名より格が下がっているが
直してもらったらどうか?と。
私はそもそもこんな考えでした。
いい戒名を貰ったからといって、
あの世でいい場所に行けるとは限らない、と。
現世で悪事を働きしこたま金を儲けた輩が
とんでもない額をお布施し、
最高の戒名を貰ったからといって果たして天国に行けるのか?と。
一般的な戒名の値段でいいではないか、と。
浮世で悪事を働いたものが
寺に高額なお布施をしたからと言って、
あの世というものがあるならば、
果たしていい場所を予約出来るのか?
そんな馬鹿なことはありえないと解りながら、
じわじわとなんともいえない懺悔感が心をつつき、
それでは父以前の先祖同様にしようと決意しました。
なんでも先祖の戒名はとてもいいものだったとかで、
・・・それを壊したのは私です。
しかし取り返しのつく破壊でありました。
○○院・・・・居士と直す。
お寺様のほうでははっきりと提示して頂けないので、
一度つけて貰った戒名代に同じ額を追加、
つまり倍になった次第です。
これならば最初からそうすればよかったと後悔しました。
生前嫌な親父だと数え切れない程思いました。
言葉には出さなかったけれど
早く死んでしまえと思ったこともありました。
しかしですねぇ、亡くなってから初めて気づくこともあります。
いろいろと父との美しい思い出がありました。
死んでしまえ・・・
美しいものを忘れ
こう思った様々な場面に対しての懺悔であります。
しかし、後々までこれは押し付けません。
父母の世代でいい戒名とやらはおしまいにする。
私が逝く時には戒名の格とか値段とかは無視して、
一番廉価なものをつけろ、と遺言を残しておくつもりです。
値段がないものほど厄介なものはないので、
気持ちだけでいいと。
信心深かった先祖と、全くそうでない末裔。
自分は他人を裏切ったことはないけれども、
取り返しはつくが父親を裏切ってしまった・・・
地獄行きでもかまわないと。
桜のつぼみも膨らみ、ああ・・・もう一年もたつのかねぇ・・・