宝篋山にて

両手を左右に大きく広げ息を胸いっぱいに、吸う。
体内に蓄積された悪いもの、出て行けと息を吐く。



あっちからぜひ見ていろや・・・



宝篋山。
全国的には全く知られてない山かもしれない。
今回の登山は六年半ぶり程度、二度目となるかな。



ここから出発。

今回は一人の登山なので、気が楽。
緑を楽しみつつ、さて山に入りました。
ああ、やはりきつい。こんなんだったっけ?


17歳の夏、友人KとHと富士山に登ったことを思い出す。
三人ともハードな部活で練習はあはあ、ぜいぜいいってたが、
「こりゃあ部活よりきついな」なんて話してたっけ。
やはり登山もスポーツだ、山登りの経験なくって、
たかが3700、あん時は簡単だろなんて思ってたが
・・・とんでもなかったね。
筋肉隆々のHは頭痛と吐き気で・・・
まあ余談でしたなw




六年半前。
もっとあん時は楽だったような・・・?
てぶらで拾った木を杖にして。
ああ、あたいの杖は家庭菜園の奥に放り投げてあるよw
ご同道の方。


さて。
獣道のような細い路、いたるところに岩や石があり、

勾配も柔らかではない。
にしても見事だ。一本のタバコの吸殻も落ちていない。



「○○くん?」
何度か休みながら登ると
中腹あたりに備え付けられたベンチから
思わぬ声をかけられた。
「・・・ああやっぱ○○君だよね、しばらく。
さっきすれ違ったときは帽子かぶっていたから・・・
もしやと思ったけど。十年近く・・・ぶりかな?」
あんた誰だっけ?
こんな場所で・・・しかも平日。
一瞬不思議に思った。
まじまじと見たら、その人はあのころと違い見事に太っていたが、
すぐにわかった。
一度も同じクラスに入ったことはない中学時代。
ましてや話したこともなかった女。
16年前の六月。
経理担当として入ったある会社にその同窓は検査担当で、いた。
昼休み「××中学の○○くんだよね」
「ああ、あなた○○さんか?何年この会社にいるんだ?」
とか話したのを覚えている。
かつて勤務していたこの会社のこと、
中学時代の同窓の現在など、30分程度話したかな。
「休みか?」
「そう、○○くんは?」
「代休」
聞けば市役所に今は勤務していて、
健康のため月に二度ほど登るという。
すぐに彼女の知人らしい男性が下から登ってきたので、
先行くわ、と言ってわかれた。



しまった!
リュックは背負ってきたが、
コンビニで買ったお茶と弁当が入ってない!
車の中に忘れてきたっ!!
沢水は澄み飲めるはずだがもはやはるか眼下、
・・・戻る気力がもはや、ない。
喉が渇いて仕方なかったが、
山頂に自販機くらいはあるだろうと我慢した。
やっと山頂についた、まず自販機を探す。



ない!ああっ、ない・・・
やっちまったなあ・・・
六年半前も同じ。あの時も自販機が、確か、なかった。
低い山なので一緒に行った者同様、この山を舐めていた。
前回は初冬だったからまだ我慢できたが。
けどしかし自販機くらいはなぁ・・・こんなに人も来るんだし。
山頂では大勢の方が弁当を広げお茶など飲み歓声をあげている。
申し訳ありませんがお茶が余っていたら
・・・あのう・・・譲ってくださいませんか?
言いたいのはやまやまだったが、なんとか我慢する。
もっと暑かったらトイレの手洗いの水でも、
多分飲んでいただろうな。



下からよく見える宝篋山電波塔。

おかげでテレビも
クリアに受信できるようになった模様(私は殆どみないけど)



そのうちにさっきの同窓の女がやっと登ってきた。
「あの人は何度もここに来ている登山仲間で・・・」
「悪いが水かお茶あまってねえか?」
「あまりないのよ、忘れたの?」
見れば半分以下に減ったお茶のペットボトルが。
仕方がない。
そこでも中学の同窓の話とか、
過去の職場のことなど少し話した。
誰々が離婚しただの入院しているだの、
聞いてもいない実にくだらん話が続く。
どうして女はこんな話が好きなのか?
「降りるわ、まあごゆっくり」
「もう?」
山頂には30分少ししかいなかった。
「ああ、水飲みたくてね、沢水んとこまで急いでいくわ」
と言って逃げるように分かれた。



沢水。
いやぁ・・・実に冷たく美味かった。

民家は勿論飲食店とかホテルなど生活用水が一切ない場所であるがゆえ、
水は綺麗、実に澄んでいる。
一息も二息もつき、力が戻る。
長いツタがたくさんあり、次来るときがあったら、
ターザンでもやってみるかwと。

また将来忍びの者になりたい人には、
絶好の修行の場でありますw




帰りは小田城ルート、
多少路の迷い来たときよりも獣道で
前回来たときのように小走りで降りられない。
石をよけ、倒れた大木を跨ぎ、小枝を少し払い・・・
あっそうだ、関係者さんなんですかね?
忍性さんを祭った?お堂に財田川事件を扱った本が、
濡れて、変色して置いてあった。
いろいろな発見あり、なかなか面白かったです。




もうすぐ麓までだ。
と歩いていたらこんなものが・・・

いつ誰が何のために作ったのか全くわかりません。
不動明王・・・かな?
手を合わせ祈り、下山しました。



何のために行ったのか?
自分の脂肪のついた腹のためではありませんw


あんたは俺よりも社交的で人に役にたっていたな
後で人に聞いたよ・・・
けど俺はからっきし駄目だ、今でも、だよ。



山頂まで車で行く術がない・・・
とても歩いては無理の高齢。


あっちから見えたかい?


それは昨年死去した父が生前ぜひとも行きたい、
と言っていた山だからなのです。