豊饒の海

murasameqtaro2010-06-22


第二次大戦後アメリカは洪水の如く日本に入って来た。
これはあたり前の成り行きであるけれど、
当時の知識人たちは、日本人は魂を失った、
と、嘆いたという。
あるいはあまりにも落差が大なので、
アメリカ洪水は永久的、恒久的に思えたのかも、知れない。


著者三島由紀夫は、
アメリカの占領が比較的短期に終わることを予想し、
アメリカの洪水が終了した後の
古い水を期待していたようだ。
日本人がその魂を失ったのかどうか・・・
自分にはよく解らないけれど、水が流れている最中に、
壺の中の水は落水に揺り動かされ、
叩き砕かれることなく泰然と、
ひっそりと自らの姿を保つべきだったと思う。
日本人に対する真のテストは、
占領中ではなくって、戦後追行されたものだ、と思われる。


アメリカはどの国へ行っても、自国のやり方を変えない。
自分達の文化を押し付けようと、する。
占領者としのアメリカは、良くも悪くも、
多くの概念と物を日本に持ち込んだ。
そして日本は全てを受け入れ、
飲み込んでしまったようだ。


日本にあってアメリカにない素晴らしいもの。
それをアメリカが持たないために、アメリカで良きものが、
日本では悪であったものが少なからず、あるはずだ。


良い物を選べば良かったのだろう。
外国文化に畏する事なく・・・
良い物を選んで、自らを高める一方で、
自らの文化、独創性を拒否するものを拒否すれば、と。


憂国ともども、
ゆっくりともう一度、読んでみたい一冊である。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

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