祭り(少年の日) 四

小学校に立つ2010年の秋。下校して一時間になるが、校庭で遊ぶ学童はひとりもいない。
ちいさな風が金木犀の香りを運んでくる。
運動会の宴が去り、鳥が上空を旋回している。
全てを観ていたその鳥は、どこか暖かくなる場所へ飛び、見た事を話すのだろう。
子供は家に帰り小鳥に戻る。


少年の日は遥か過ぎた。
あれから数十年の月日が流れ、そのやぐら、は二度と立つ事はなかった。
鏡を見る。確かに大人だ。鏡の裏側に過去が凝縮されている。
月日の分だけ自分が立てた物。
それは幾つあるだろうか?
月日の分だけ自分が描いた事。
それを子供は見ていた事だろうか?
鏡の裏側からそれを見ているのだろうか?
あの日の俺のように、赤銅色した大人達が作った魔術の素晴らしさを、俺に求めているのか?
いやそんな事はない。
鳥が飛ぶ上空にアマリリスの唄が聞こえない。


何かになろうとか、これをやって見たい。
夢を見たことそれは沢山あったっけ・・・・

〜続く〜