箱舟が出る港 第七章 一節 駆逐艦大風 知流源吾 十七

murasameqtaro2007-05-20

 「だからよう、
心理学の院長さんよ。
俺の舎弟が
あんなになっちまったのは、
山に関係あるんだぜ。
てめぇのトコは対応が
全くなってねえな。
ゼニで片付けてやろうと、
こっちは優しく提案してるんだよ、
なあ?」
 「山と病院は関係ありませんよ」
 「何をぬかしやがる!!
いいか? 何度も言ってるように、ここは鉱山病院だ。炭鉱の中には毒がある。
入れば病気にかかる事を覚悟するって事よ。それをココが治すと言うが、
一向に治らねえな。山と病院は一心同体だ。関係がねえとは言わせねえ!」
 「貴方の舎弟とやらは、何度検査しても健康そのものですな。異常など
ありません。ゆすりはこれ位にしていい加減帰ってくれませんか? でないと、
警察を呼ぶことになりますよ」
 「お? またそう出たか。なるほどな。おめえ、うちの親分の力を知らねえよう
だな。田舎警察くらい、指一本で動かせるのよ、ケッ」
 「それは凄いね、ふっふ・・・。腐ったヤツラよ」
 「な、な? なんていい様だこの野郎!! おう? 皆藤先生よ。こうなりゃ
仕方がねえ。金目のものを貰って行くしかねえな。後悔するなよ。おうっ、
野郎ども、片っ端から、ぶん取れ!! 邪魔するヤツラはぶった切れっ!
こんな病院ぶち壊してくれる!! 」
 坊主頭で目が窪んだ、カイゼルヒゲなとをはやしたデブが、ジロリ
と皆藤院長を睨んだ。
 人相の良くない手下が五、六人いる。全員が日本刀を抜いた。
その時であった。
 「今、取り込んでますので、どうか後に、後にして下さい!!」
女の悲鳴に近い声が聞こえた。
 「いや、誰が来てるか知らんがかまわんよ。こっちも急ぎの用なんでね」
知流源吾を先頭に、山中、そして大林が院長室に強引に入りこんだ。 
 「ん? 何だ、てめえらは? 今看護婦が、取り込み中だと言ったろ? 」 
 坊主頭が振り返り、三人を恫喝した。