箱舟が出る港  第三劇 二章 月世界の戦慄

「軌道修正0.02フィート・・・スペースバンカーバスター発射準備
・・・ようそろ」
人工知能ハート【心】の無機質な作戦開始の声。
「軌道修正0.02なり、ようそろ!」
近頃眉間の皺が深くなったマークが続ける。
宇宙船やまぐもの位置測定ディスプレイに、その攻撃地点が、ピピ、
という音とともに表示され、矢印が止まった。
「真空エネルギー100パーセント完了 副砲、起動修正0.02なり、ようそろ!」
ポールが親指を立てた。
司令塔ハートの色が綺麗なピンク色に染まった。
やまぐも船長、唯根の声が、鋭き刃物に変わる。
「ファイヤー!!」
恰もピアノ線のような発光が、やまぐも下部の副砲から照射された。
それは驚愕すべき速さと破壊力であった。
一瞬というものは、この武器の為に作られた言葉のようだった。
上空を見上げる戦闘ロボットウルフ16000は両足に力を込めている。
息をする暇もない時間の中、月面から夥しい岩石が飛び散った。
巨大な岩石が16000にぶち当たるが、戦闘ロボットはびくともしない。
半径2メートルほどの穴がほっかりと開いた。
「ウルフ16000、潜入せよ。X1は地下からの迎撃に備えよ。X2は待機せよ」




「やまぐもの花火があがりましたな・・・という事は?」
ボイジャーが敗北したという事です」
「敵は何者なのか・・・そろそろ教えてくれてもよいでしょう?」
「ひとつは異次元・・・からの侵略者・・・もうひとつは先祖なのです」
「…先祖とは?具体的に言ってくださらんか?」
「ミスター・マース・ジム。それを話したら戦いになりません。だが駆逐しなければ
ならないのです」
風雲急を告げるミッドウェイ。
ミリオンダラー号が慌ただしく動いた。