滄よ眠れ〜本のご紹介〜

ミッドウェイ海戦での米軍の死者は362名。そのうち208名が飛行機の搭乗員。
しかし、そのすべてが戦闘中に死んだわけではない。日本軍の零戦や艦艇の
対空砲火で撃墜されながらパラシュートで脱出した者も、乗機を操って海面
に不時着して脱出した者もいる。これらの搭乗員たちは海上を漂流しつつ
救いの手を待っていた。彼らを救助したのは日本の駆逐艦である。だが捕虜
となった彼らはこの戦争が終わっても1人も生きて祖国に帰らなかった。彼ら
はどうなったのか。
彼らの存在を明らかにしたのは日本の「第一航空艦隊戦闘情報」だった。
すべて焼却されたはずだったこの「詳報」が、ただ一部残っていて、それが戦後
進駐して来た米側の手に渡った。そこには捕虜となった三人の名前が書いてあった。
救助したのは駆逐艦「巻雲」と「嵐」。著者は米国立公文書館で両艦の乗組員の
尋問記録を発見した。千五百ページにおよぶこの記録と生存者の新たな証言の
中から捕虜たちに加えられた残虐な真実を明らかにしていく。
著者によって白日の下にさらされたこの「真実」はきわめて衝撃的である。
しかし、これが戦争だ、という事実から目をそらすことは出来ない。
全六巻の中でも異色の、鋭い読みと迫力に貫かれた巻でもある。