佐藤秀光さん

佐藤秀光さん

自分の両膝には傷がある。
バイクで転倒、そして追突した傷である。
恥じを忍びまず、近い方から。近いといっても二十歳の頃である。二度目は筑波スカイラインだった。



ワインディングを曲がりきれず、横滑りになり転倒。全身を打ったが、救急車ではなく、先にパトカーが来た。幸い軽い打撲と、左膝を何針か縫っただけで済んだが、今考えるとなんとも恐ろしい。対向車が来ていたら大怪我、もしくは死んでいたかも知れない。その前に違反を何回かしていたので、これで免許取り消しとなる。教習所など金が無かったので行かず所謂一発、後に直接試験場に乗り込み、現在所持の二輪免許は二度目の取得である。
こんな男がそれまた後に、総務担当していた折、安全運転管理者として、会社で管理指導などしていたのは呆れたものだが、まあこれも経験で、その後殆ど捕まったことはない。
おかしいのは何かの免許で違反を繰り返し、免許取り消しになった場合、持っている全部も取り消しになる。これはおかしい。普通自動車も大型も無くなる。所持しているいくつかの免許のうち、ひとつで取り消し処分になると全部パー。これは絶対おかしい。取り消しになった免許で済むべきと思う。
まあその頃車の免許を持っていなかった、これは不幸中の幸いだった。




もっと前、一度目は高校の修学旅行の一日前だった。
ある店の前に軽トラが止まっていた。避けるべき距離まで来た時、なんとその軽トラがバックして来たのである。おまわりさんに聞いた話だが、その軽トラは整備不良だったのだ。バックライトが点灯されず、それが見えず、当然止まっていると思い、まさか動き出すとは思わなかったのである。まともに右スネをトラックの後部にぶつけ、これも転倒。近くの外科へ運ばれパックリと開いた傷を見る。筑波山で転んだ時よりまともに膝を打った、縫った。
―――何、明日から修学旅行ですって?
―――ええそうなんですよ、と母親
―――行かない方がいいでしょうね
俺の顔を見るおっかさん。
―――いや絶対行きます。大丈夫です!
洋服などを買ってきた、あるいは買いに行った時だと思う。
―――ま、本人が言うなら仕方ないでしょうな。骨折はしてないし無理しなければ、なんとか・・・ただ傷口が開かないように歩き方に注意。開いたら向こうの医者にかかりなさい、とかだった。
思い出作りの為に特別に考慮してくれたのだと思う。
医者はそう言い、縫合の後、傷口を念入りに、しっかりと包帯で止めてくれて、薬をくれた。
こう言うわけでと、友人のI君(○貝くんありがとう)や他の友人達に話すと、俺が支えてやるから大丈夫だ、行くべと。これは嬉しかったな。家族も担任に話してくれて、出発前の土浦駅構内で、
―――ああ、お前は立ったままでいいよ、

そう気を使ってくれたな。全員座って引率の話を聞いていた場面である。座ると膝に負担がかかった。行くのはなんとか行けた、ゆっくりと足を引きずり歩いた、傷口もなんとか開かなかったようだ。ただ風呂には絶対に入れなかった事が残念だった。



バイクがその後より好きになった要因は、写真の人に憧れを持っていたからだ。
―――音楽、何聞いてんのよ?と近所の少し年の離れた先輩。
―――佐野元春とか大沢誉志幸レベッカとかですけど
―――ロックだね、じゃあクールス聞かなきゃ、永ちゃんよりいいぞ
とかの勧めで、借りて聞いたのが始まりだった。
ま、この話はこれでおしまいとして、クールスのリーダーが雑誌に載っているぞ、との情報を得、買った次第の写真がこれである。表紙は買うのも恥ずかしい週刊誌であり、裏表紙のまま顔をそむけ、若いねーちゃんのレジへと進んだ。
その中でクールスのりーダー、佐藤秀光さんはこんな事を語っていた。



以下週間大衆からの抜粋である。

四月一日、俺の誕生日に中野サンプラザでライブやるんですよ。ダウンタウンブギウギバンド、キャロル、クールス勢ぞろいで。最初で最後。いつくたばるかわからないから、年に一回大きなことをやろうって、盛り上がってね。中野サンプラザは我々がデビューした場所なんですよ。だから、横山剣とか清水宏次朗とか、岩城滉一とか来いよって。もうひとつ大事なのが、この間息子の力斗の肝臓を移植手術した、安岡力也のこと。だから力也のチャリティコンサートなんだ。クールスも36周年ですからね。
ちゃんと毎土日にコンサートやってるんです。熊本、高知、仙台、明日は姫路です。それは全部バイクのおかげ。
店始めてね。バイクと音楽とファッション。俺はこれで飯を食っている。その考え方を早く持てば、勝ち組みと言うか、納得組に入れる。そこが一番大事なんですよ。俺の生き方の中で、納得に成功が加わると、もっと最高だよ。俺と岩城と舘ひろしの三人でクールスを作ったの。二人ともバイクのバの字も、ケンカのケの字
も知らない。そう言う部分は俺が教えたの。あの二人は生き方が上手いからね。なんかあると、すぐにいなくなっちゃう(笑)。酷い目に遭うのは俺ばかり。でもね、それも逆にいい経験で、失敗は成功の元で、最終コーナーで鷲掴みするから、そういう歌を作ったの、俺。ハングリーな精神、どんなにモテて、どんなに金を持っていても、腹を減らしている頃を忘れちゃいけない。俺はコンピューター出来なくても、感覚で生きているから、若い者には負けないよ。みんなで、何百台って走るでしょ。着いた所で俺はスーツに着替え、ドラムに座ってクールスやるんですよ。集中力って、人間一時間が限界なんだけど、バイク乗っていると、集中力ってのは、養われるのですね。現場感覚って言うのかね。だから病気したことがない。耳も目も鼻もすごく調子がいい。俺のエンジンは、フルチェーンなんですよ※


いい言葉が沢山ある。これだけの為に買った週刊誌だけど、一冊の小説に値したようで、良かったと思っている。
自分の脛には傷はないけれどもw、両膝には、ある。集中力が無くなった時に、運が悪かったら死んでいた筑波山パープルラインの一瞬を思い出し、さあ頑張ってみようという気持ちになりましたね。単車は売却して手元から消えたけど、少しお金がたまったら、勝手に買ってしまうつもりです。言い訳は「集中力」の強化ですw

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  http://www.youtube.com/user/ryusi12#p/u/49/Q3OfdPtDZtAさんのご好意によりお借りしてます

一番右がヒデミツさんです。