旅の軌跡 一 北海道登別 3/10

murasameqtaro2011-03-09

こんもりとした森の木立の中で一面に降りた少しの粉雪が逝った。
初めて行った北の大地の春は真っ白なるアクビでもしていたのだろうな。



白老ポロトコタン村へ入ると「アイスクリームいかがですかっ」
のお姉さんが声を張り上げ、ジェラートを売っていた。
○子はトコトコとその方面にあるき出し、ふたつ買ってきた。
―――結構美味いなコレ
―――結構どころじゃないっしょ、凄く、と言いなさいよ
――――――じゃあ、凄く、ウメ
――――――そうそう、素直ね 食べず嫌いめがw

空は蒼も見え出し、肌寒さのジェラートは、北の大地が持つ
強く、しなやかで、そしと優しささえある冷たい膂力を持っていた。



俺は女性連れだと、その日必要と思われるお金を全部相手に渡してしまう。
だいたいスーパーのレジだのレストランだので、男が払う姿はみっともない、自分ながらの美学なのである。
そのジェラートがいくらしたのかも知らない、渡した以上任せ何を買おうと知ったことではない。それを知っているから「食べたい?」と聞かないでも行ってしまうのだった。









その頃は補佐のまた下の補佐兼雑用係りに等しい中、ペーペーで資金繰りなど仕事でやっていた。
性に合わない。専攻が会計学だったから、仕方なく就いた仕事だ。
実務になるともっと性に合わない事を知る。財務諸表の作成などはいいんだけど、下っ端が最初にやる仕事、小口現金の管理など実に合わないなぁとため息を吐いていた。
こんなものは私生活まで持ち込み、やりたくはないのだ。
信頼出きる人に全て任せてしまう。
美学かどうか知らんけど(そりゃあただの不精だろうと言う人もいる)、今でもそんな仕事しているし、相変わらずなんだよ、な?




で、広場で円陣を組み、アイヌの末裔が踊っていた。
喜怒哀楽の表現か、意味するところは理解不可能であったが、神々しい流れもあった記憶が蘇る。
―――アイヌ語だろありゃ?何言っているのか解らねえな、キミは?
―――解るわけないよ、ワタシ、アイヌの人じゃないしねぇ







北海道の人たちはこちら側を「内地」と呼ぶ。
おかしな言い回しだなと思う。
その内地の人間が北の先住者アイヌを迫害、駆逐した・・・
そして日本オオカミも絶滅させた・・・
人間も、魚も、鳥も、動物も、草花も、この国に生まれて、そしてこの国で生きて、いる。




円陣は空気中にいっぱい膨らみ、膨らみきったテニスボールのように硬くなっている印象だったよ。
その踊りの根底には迫害されたものたちのレクイエムがあるのではあるまいか?
太古の異様な世界は妙なわけだけど、誰も知らない。




俺たちの故郷はどこだったか?
などとふと考え彼女の横顔を見たが、まぁこいつに聞いても無駄だと知っていたから、俺も踊りを見ながらアイスを舐めていた。


俺たちの故郷はどこだったかと。



0、 -7 、4、 -1、 5 、1、 -3、 -5、 2、 -4、 9



〜続く〜


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ヨソウ予想は外れだったw反対から読むとウソヨだよ

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とっても可愛い詩だな


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14歳 (1) (小学館文庫)

14歳 (1) (小学館文庫)

小学館も大変な事をしてくれたものだ。絵に自信があったのだろう、学卒の新米、そのバカ担当者が先生に向かって「拳はこう描くのですよ」。
いくら温和な楳図かずおでも、怒って当たり前だろう。
担当がその後どうなったかは知らない。
知っているのはそれを機会として、当該作品終了後スペリオールの発行部数は一時的に激減、また楳図先生は以後新作はひとつも出していない事実である。
最後の作品になるのは惜しい・・・


本書は「神の左手悪魔の右手」→「わたしは真悟」のふたつを纏めたような壮大なドラマである。